この店には、東京という街が育てきた外食文化の成熟がある。
だからここでは、大いにしゃべり、食べ、飲みたくなる。集まる人たちも、いかにも遊び慣れて、食べこんできたお客さんたちが多く、毎夜、彼らの喋り声や笑い声が、響き渡る。
彼らは、人生における食事の大切さを知っている。
だからこそ食べることに真剣であり、醸し出す空気が、腹が空かせ、酒を飲ませる。
人生って悪くないじゃないか、そう思える、リストランテである。
料理はシチリアの料理。
派手さはないが、郷土料理の温もりと力強さを盛り込んだ料理である。
よく炒めた玉ねぎを魚の下に敷き詰めて、ローズマリーのせてローストした、イサキやキンキ。
肉団子とパスタが口の中で踊る、ポルペッティのベスビオ。
甘酸っぱさに酔う、カジキ鮪のアグロ・ドルチェ。
アーモンドの甘い香りが漂う、シチリア風トリッパの煮込み
体の芯に力をみなぎらせる料理が、活気と精力的な喋りや笑いを盛り立てる。
そこを、スマートなサービスが支え、煽ってゆく。
そこには、人生を愉快にする、トラットリアの心意気がある。